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未来の図書館のために 前川恒雄著 夏葉社

 

現在の日本の公立図書館の創始者・前川恒雄さんの遺作と言っていい本。

東京日野市に図書館長として呼ばれると、中央図書館より自動車図書館1台でよいと活動を始めた人。とにかく、図書館は住民・市民の近くに出て行かなければだめだと言って。

その移動図書館ひまわり号のまわりには人々が溢れた。その当時、最も利用されていた市の図書館の4倍も5倍も利用されたのである。そこで、その利用の多い駐車場に分館を次々と建てていった。最後に保存も調べものもできる中央図書館も必要となり、それを作った。それまでの多くの市長が自分の業績を誇るために、市民から遠いところに中央図書館をぽつりと作るというのと全く違った。

この前川さんの方法を当時の美濃部東京都知事が認め、補助金政策を打ち出し、東京多摩地区に次々と図書館ができていった。少し前に話題になった清瀬市の図書館もその一つである。

その後、前川さんは市の助役になり、驚いたことにさらに、滋賀県立図書館長へと「天上がり」していった。古い体質の残った日本社会では天下りが常だが、前川さんは求められ、市→県へと下から上へと上がっていった人である。

著作に『図書館の発見』(石井敦・共著)『われらの図書館』『移動図書館ひまわり号』などあるが、この本は、県立図書館長になった後の苦労話も詳しく、まさに民主主義の人であったことを再確認させてくれる。さらに、この本は、日野図書館時代の前川さんの下で働いていた3人の人たちが、前川さんに聞き書きをしたものをまとめたもので、それにも拍手を送りたい。

公立図書館は、住民にあらゆる資料を提供して、民主主義社会を下から支える基本的な施設・機関である。前川さんは、そのことを日本中に全力で定着させようとした人だった。